MONTHLY FORUM
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2026年3月8日
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白鳥 哲
氏 講演

なぜ今、
ギフトに生きるなのか?

「腐るお金」で町が蘇った——与えた人ほど、与えられる。ギフト経済の実践者たちが示す、資本主義の"次"

オーストリアの小さな町ベルグル——第一次世界大戦後の恐慌で人口の3割が失業していたこの町は、「腐るお金」の導入からわずかな期間で蘇った。流通速度は法定通貨の14倍。白鳥哲監督が新作映画「ギフトに生きる」を通じて伝えようとしているのは、与えることで回る経済——ギフトエコノミーの実例だった。

講師:

白鳥 哲

映画監督/プロデューサー

映画監督歴21年、劇場公開作品10本。代表作に「祈り」「ゼロ」「ラストホープ」など。現在、「与える」ことをテーマにした新作「ギフトに生きる」を制作中。

SUMMARY 01

理事長挨拶——「監督の資金相談から、この場が生まれた」

白鳥監督が新作「ギフトに生きる」の制作資金について理事長に相談したのが、この日の始まりだった。

「どこかが金をポンと出したら、御用マスコミみたいになって何の意味もない。たくさんの人がちょっとずつ協力する場を作ろう」

理事長は白鳥監督の活動を支援する理由をこう語った。「舞台や音楽、映画は、人に何かを伝える時にものすごく有効。設けるためじゃなく、社会を変えようという思いで頑張っている監督だからこそ、支援したい」。今の世の中に対する根本的な危機感——「このままでは絶対にダメだ」——が、その原動力にあるという。

映画の出演者である新井和宏氏・酒井裕基氏も偶然この場に縁があったことから、講演後のトークセッションが実現した。実はこの日、本来は酒井氏が月例会の講師を務める予定だったが、白鳥監督の映画を先に紹介しようと場を譲ってもらったという裏話も明かされた。

「皆さんが感じてもらって、何か行動してもらいたい」——そんな思いでこの場を設けたと理事長は語り、白鳥監督への拍手を呼びかけた。

SUMMARY 02

「与える」から生まれた経済——ギフトエコノミーの源流

転機1

アメリカで届いた「4万食」

白鳥監督がギフト経済に出会ったのは14年前。見知らぬ人々から贈られた食事会の場で、初対面同士が家族のように打ち解ける空気を体感した。仕掛け人は、元GAFA関係者として90年代のIT黎明期に成功を収めた人物だった。

転機2

資本主義の最先端にいた男が辿り着いた「腐るお金」

新井和宏氏は、世界の資本の大半が147社に集約されるという構造の最先端——金融業界に身を置いていた。だがゼロサムゲームの経済が生み出す格差に向き合ううちに鬱病を発症し、そこから「格差を生まない経済理論」を模索し始める。「腐るお金」——ドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した、期限付き通貨の理論。

SUMMARY 03

「1番ギブした人が、ギブされる」——ベルグルの奇跡

オーストリア・チロル地方の町ベルグルは、人口約4000人。第一次大戦後の恐慌で人口の3割が失業していた。町長が導入したのは、期限付きの「労働証明書」。使わなければ価値が減っていく仕組みが、皮肉にも経済を活性化させた。

  • 流通速度が法定通貨の14倍に——期限が迫るほど人は「義理を果たしたい」という心理になり、お世話になった人への贈与が連鎖する
  • 雇用も次々と生まれ、町はわずか短期間で蘇った——「ベルグルの奇跡」と呼ばれる所以である
  • 健康効果も確認——ウィスコンシン大学名誉教授の研究では、ギブする人にオキシトシンの分泌が確認されている
  • 進化生物学の実験結果——コンピューターシミュレーションで奪い合うコミュニティと分かち合うコミュニティを比較したところ、奪い合うコミュニティは一時的に成長しても自滅し、助け合うコミュニティは「適応度」が増すことが判明している
SUMMARY 04

トークセッション——現代版ギフト経済の実験場

講演後は、映画にも出演する2人の実践者が登壇した。

  • 新井和宏氏(地域通貨「eumo(ユーモ)」代表)——全国約30の地域コミュニティで導入。大阪・谷町では、金融機関が貸せない相手に融資し、金利をすべてNPOへ寄付する「谷町ファンド」を運営
  • 酒井裕基氏(熊本のコミュニティ「冨嶽外」代表)——3ヶ月で失効する地域コインを導入し、貯め込みではなく即時の互助を促す実験を展開。出資者を「親方」と呼び、現在43名が参加

2人は「市場規範」(対価を前提にした関係)と「社会規範」(見返りを求めない関係)という行動経済学の概念を引きながら、資本主義とギフト経済の間を橋渡しする実践の難しさと手応えを語った。

QUESTION AND ANSWER

質疑応答

映画監督の白鳥監督を招き、理事長との対談形式で行われた。外国人労働者受け入れや「日本人ファースト」という社会問題、そしてリタの精神について議論が交わされた。

Q外国人に対する政府・自治体の手厚い支援と「日本人ファースト」という批判について?

A政府・自治体が外国人に手厚い金銭的支援をするのは「日本を守らんといかない」という批判になっている。しかし私はそうではない。「リタの精神」は国境・地域・言語を超えて、どんな人でも日本で当たり前のことができる自立した支援をする。外国では当たり前のことが日本では当たり前でない状況で、渡ってくる人たちに手厚い支援をして自立させるのはなぜ悪いのか。

Q「他人のためにやる」精神は、どこから来るのか?

A1人親で中高生を支援し始めたとき、単なる義務の精神ではなく、「人に尽くす」というギフトの考え方が身についてきた。なぜ継続できるのかというと、人に喜ばせようというのではなく、自分に返ってくるからだ。ジョハリ師の言葉に「自分のためにやるのも他人のためにやるのも、実は神人へのそういう風なことで趣旨は全く違わない」とある。

Q「日本人ファースト」批判を乗り越えるにはどうすればいいか?

A自分の先祖を愛することが自分を愛することの第一歩。先祖を愛する=その土地の精神を大切にすることで、他の民族性を持った人との本当の交流が生まれる。まず自分自身・先祖・土地・先人の経緯を大切にし、愛を持って見直すことが大前提。今この大前提がない中で「労働力が足りないから入れる」という考え方でいることに、一度見直す必要があるのではないか。

Q外国人を家に招き入れる時の心構えは?

A靴を脱いでそのまま上がってきて、布団も靴のまま寝て、自分たちのやり方をする。その全てを受け入れることが必要がある。相手が自分の家に入ってくれたのだから、自分のスタイルを押し付けるのではなく、相手のやり方をそのまま受け入れる。これが真の受入れだ。

MONTHLY FORUM

第147回 レオ財団 月例会

2026年03月_歴代1

開催概要

開催 一般財団法人レオ財団 第147回月例会
(2026年3月)

会場 ル・クロ・ド・マリアージュ
レストラン&ウェディング

司会 西村 実花
(一般社団法人「こどものみかた」代表)

講師 白鳥 哲 氏
(映画監督/プロデューサー)

VOICES FROM THE FORUM

参加者たちの言葉、それぞれの気づき。

毎回60名を超える経営者・社会人が集まる月例会。登壇者の言葉は、それぞれの現場に持ち帰られ、静かに、しかし確実に何かを変えていく。

白鳥監督の最後の教育勅語の語りには涙が溢れました。先に与える。相手の喜びを自分の喜びにできる。損得よりも大切にすることがある。私は与える生き方をしてる方が不思議ですが、最終的には大きなものを受け取って生きていっていると思います。

S.M.

昔の日本は自然に出来ていたことができなくなっていると感じています。すべてのお年寄りは自分の両親、すべての子どもは自分の子供だと思えば、正しい対応ができる気がしています。今日もいろんなことの原点を学ばせていただきました。ありがとうございます。

A.M.

ギフト経済について初めて知ることが出来ました。また、日本への感謝の声を知れたことも、有り難いです。助け合い、譲り合いの、優しい社会だった日本から、今の社会との違いを知る事が出来、私から何が出来るのか?人に喜んで貰える行動を積み重ねていきたいと思いました。

M.A.

社会規範と市場規範という考え方に強く心を動かされました。この視点は、自分の人生や関係性を整理する軸になると感じています。利他の精神からなる信頼や善意を土台にした関係に、市場の論理を無自覚に持ち込むことで、関係が歪んでしまうことがあると気づきました。

I.T.

昨日は素晴らしい講演をありがとうございました!本当に色々とためになる形で教えていただいたと思っております。

特に贈与型経済のことであったり、送り合う社会、優しい社会というものをどういう風に作っていけるかというのを、改めて大切だなと感じました。それと同時に、私たちはそういったものを元々は持っていたんだというところも、非常に勉強になったところです。

そしてお話を伺いながら、なぜそれが広がっていかないんだろうか。何を解決したらいいんだろうか。そんなことも考えられた貴重な時間となりました。

本当にいろんなお話をありがとうございました!

Y.Z.