MONTHLY FORUM
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2026年2月8日
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平尾 恒明
氏 講演

ソーシャルビジネスが介護危機と途上国の雇用を同時に解決する、新しい資本主義の実験

日本の介護業界は2030年に約69万人の人手不足が見込まれる。バングラデシュには仕事を求める看護師資格者が溢れている。この二つの「課題」を、一人の元銀行マンが「ビジネス」として解決しようとしている。Japan Action Tankは昨年12月にバングラデシュ政府と正式契約を締結。現在150名の若者が日本の介護現場を目指して研修中だ。

講師:

平尾 恒明

Japan Action Tank 代表理事

元メリルリンチ、UBS銀行プライベートバンカー。60歳で金融界を離れ、ソーシャルビジネスへ転身した実践者。

SUMMARY 01

理事長挨拶 —「14年前の危機感が、今日につながった」

レオ財団を設立したのは2012年、今から14年前のことだ。理事長は当時を振り返り、こう語った。

「このままでは日本はダメだ、という危機感があった。企業経営者が会社経営だけをやり続けてもダメだ。人脈もお金も、社会に還元されなければ意味がない。」
財団の目的は三つ。「社会的使命を持つ人材の発掘・支援」「次世代への教育」「お金を生きたお金として社会のために使う仕組みの創造」。その理念を体現していたのが、UBS銀行のセミナーで出会った平尾氏だった。

理事長は、平尾氏のセミナーでグラミン銀行(マイクロファイナンス)の話を聞いた瞬間、「お金が減らずに生み出され、世の中のためになっていく仕組みが、本当に存在するのか」と衝撃を受けたという。そしてその場ですぐ平尾氏に連絡を取り、フィリピン・パンパンガに「レオブランチ」を設立。約3,000万円を投資し、困窮する女性たちへのマイクロファイナンスを実践してきた。

「今日、14年越しでこの話を聞けることが、本当に楽しみだった」——会のはじまりに、その言葉が静かに、しかし力強く響いた。

SUMMARY 02

なぜ元銀行マンが、介護×途上国なのか

転機1

アフガニスタンに病院ができた日

UBS在籍中、富裕層クライアントの「アフガニスタンの女の子のために病院を建てたい」という要望を受けた。フィランソロピー部門を動かすこと6ヶ月。小さなクリニックが完成した。「社会貢献とは何か、初めて肌で感じた瞬間だった」と平尾氏は語る。

転機2

60歳で全てを捨てた

年収・地位・キャリア。それらを手放して60歳でJapan Action Tankを設立した。理事長はこう評した。「60歳でそれを自らポーンと捨てて飛び込んだ。銀行員の時よりも、今の方が生き生きしている。楽しみながらやってる。それが本物の証拠だ。」

ユヌス氏の思想:貧困は「システムの失敗」

2006年ノーベル平和賞受賞者、ムハマド・ユヌス氏が確立したマイクロファイナンスは、貧困層の女性に少額融資を行い自立を促す仕組みだ。女性への返済率98%に対し、男性は40%に落ちる。ユヌス氏自身、バングラデシュで3度の投獄を経験しながら国の首相へと上り詰め、政府との連携契約を締結。「2040年までに100万人の変革」を掲げて活動を続けている。

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SUMMARY 03

ビジネスモデルの全容:Win-Win-Winの設計

Japan Action Tankが描くのは、三者が同時に得をする構造だ。

  • バングラデシュの若者:日本語・介護資格を取得し、高収入の就労機会を得る
  • 日本の介護施設:慢性的な人手不足を解消し、多様性ある職場を実現する
  • 日本社会:高齢化社会の最大課題を、民間主導の仕組みで解決する

プロセスは明快だ。バングラデシュの看護大学と提携し、1年間のプログラムで日本語能力試験N4と介護特定技能を取得。2024年12月の第一期(50名)に続き、2025年1月には第二期(100名)が開校。現在150名が研修中で、修了後は日本の介護施設に就労する予定だ。受け入れ側の姿勢についても、平尾氏は明言した。「ハートのある経営者がいる施設だけに紹介したい。安い労働力として見ている人には、送らない。」外国人スタッフが入った施設では、日本人スタッフの意識も変わるという。「会社の空気が良くなった」「スタッフが切磋琢磨するようになった」——多様性の導入は、コスト削減策ではなく、組織変革のトリガーになり得る。

QUESTION AND ANSWER

質疑応答

質疑応答は活発だった。介護施設の経営者、連携を申し出る参加者、事業の持続性を問う声、会場の関心の高さが、そのまま問いの密度に現れていた。

Q受け入れ1人あたりのコストはいくらか?

A現在、手数料は検討中の段階。ただし、フィリピン・インドネシアルートと比較して競争力のある水準を目指している。研修生はバングラデシュの看護師資格保持者に限定しており、基礎能力は既に備わっている。日本では介護士として働くことになるが、イギリス式の看護教育を受けた人材であることが強みだ。

Q2,400人の応募者から100名を絞るプロセスは?

Aまず看護大学側による書類選考で2,400名→300名に絞る(成績優秀者が残る)。その後、独自のペーパーテストと個人面接で100名を選抜。面接で最も重視しているのは『モチベーションの深さ』だ。

Q面接だけでは演技できるのでは?本当のやる気をどう見分けるのか?

A「自動車整備の業界で10数年、採用面接を続けてきた経験がある。大体わかる。服装に出るんです。田舎から来て、格好は地味でも、目が違う。弟や妹のためにこのチャンスにすがらないといけないという気持ちは、隠せない。」——平尾氏はそう語り、会場を静かに沸かせた。

Q(大阪の介護施設経営者より)連携したい。受け入れまでの流れは?

AN4取得後に日本入国が可能となり、介護特定技能の資格取得後に施設へのマッチングを行う。現在、ハートのある施設長がいる医療・介護法人との連携を積極的に進めている段階。本日の会でも、複数の参加者から具体的な連携の申し出があった。

MONTHLY FORUM

第146回 レオ財団 月例会

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開催概要

開催 一般財団法人レオ財団 第146回月例会
(2026年2月)

会場 ル・クロ・ド・マリアージュ
レストラン&ウェディング

司会 西村 実花
(一般社団法人「こどものみかた」代表)

講師 平尾 恒明 氏
(一般社団法人 Japan Action Tank 代表理事)

VOICES FROM THE FORUM

参加者たちの言葉、それぞれの気づき。

毎回60名を超える経営者・社会人が集まる月例会。登壇者の言葉は、それぞれの現場に持ち帰られ、静かに、しかし確実に何かを変えていく。

悪徳ブローカーによって多額の借金を背負って日本にやってくる人が大勢いること、そのブローカーが信じていた学校と繋がっていることもあること本当に悲しく思います。平尾さんの素晴らしい活動を通して日本を好きでいてくれる外国人労働者の方が増え、日本で働いてくれることに感謝できる日本であってほしいです。目標をもった時に3/4の期間で達成計画を立て、残りを次のことへの下準備として使うという余裕のある行動をと思っていたが具体的に示していただいたので実践したいと思います。

I.Y.

ユヌス博士との交流、誇らしく思いました。必要なところに、それを望んでいる人材を届けるプロジェクト、それが国内の中だけでなくバングラデシュとですから、大変だと思います。平尾さんの世の中の為、人の為のエネルギーが困難を乗り越えられたのだと思います。介護の現状を知り、根本的な問題点を考えました。1つに、食の問題です。添加物、農薬、また栄養のアンバランス等が人に及ぼす影響が晩年に介護が必要な身体をつくっている要因となっているように思います。

K.M.

ソーシャルビジネスの定義について改めて学ぶ機会をいただき、本来は行政がそうあるべきなんだろうと思いますが、実際の社会の中で機能していない部分をビジネスとして成立しながら、他人のために役に立てる動きができることを知りました。目標を達成するために1年を9ヶ月と考えて動くこと、この動き方をすることで今はなかなか時間が取れないと思っていましたが、9ヶ月でやり切れば残りの3ヶ月はいろいろな動きに時間を取ることができると気づきました。

A.Y.

素晴らしい講演を聞かせていただきました。ありがとうございます。気の遠くなるような時間とエネルギーをかけて、新しい世界の構築をされていることに感銘を受けました。これからの世界は、国を超えて互いの強み、そして弱みを補い合うことで、新しい世界の形を創っていくことができるかもしれない。それが、戦いと奪い合いで自国の弱みを補っていた世界の在り方を、変えるかもしれない。この活動は、世界平和への一歩だと感じました。

I.J.

平尾さんが、一流の仕事や安定した立場を手放してまで、バングラデシュの10万人プロジェクトに取り組まれている理由が、「善意」や「理想論」ではなく、非常に現実的で誠実な覚悟に基づいていることが強く心に残りました。支援する・助けるという上下関係ではなく、人と人が対等に尊厳を持って働き、生きられる道をつくろうとしている姿勢に、新しいソーシャルビジネスの在り方を教えていただいた気がします。

T.T.