MONTHLY FORUM
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2026年1月9日
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長田 一郎
氏 講演

現場から生まれた、
社会を変える一歩

「これは学童ではない」と行政に言われ——ホテルの定休日を無料の子供の居場所にした、高校生の"忖度なき提言"から生まれた挑戦

火曜定休のホテルで、なぜか行政に「これは学童ではない」と言われた——月曜から金曜まで毎日預かるのが学童の定義だからだ。それでも長田一郎氏は開き直った。「では学童ホテルです」。きっかけは、自社に取り入れた「忖度なき提言」制度で、ある高校生が突きつけた社会課題だった。

講師:

長田 一郎

株式会社ホロニック 代表取締役社長

「セトレ」ブランドでコミュニティホテルを展開。2025年、ホテルの定休日を活用した無料の子供支援拠点「学童ホテル」を一般社団法人として設立した。

SUMMARY 01

理事長挨拶——「AIに人生のプランを委ねるな」

年頭所感を読み上げた理事長は、数日前に試した実験を紹介した。自著を読み込ませたAIに「1ページで自分がやりたいことをまとめて」と指示したところ、3秒で出てきた答えが「良き経営者になりたいのではなく、天に選ばれた役割を最後までやりたい人」——理事長自身、思わず「俺ってめちゃくちゃええやつやな」と笑ってしまうほどの精度だったという。 「本当にやりたいことは『善を為すために生きる』——この一言に全てが集約されている」 AIの精度に驚きつつも、理事長は警鐘を鳴らす。PDCAのP(プラン)は生まれた瞬間から「勉強しなさい」と決められ、C(チェック)は偏差値という他者の物差しで測られ、そのままA(アクション)として「いい会社に入る」ことへ押し流されていく。誰もが人生で一番大事なはずのプランとチェックの基準を、知らぬ間に他者——そして今ならAI——に委ねてしまっている。それこそが現代人の最大の問題だという。

SUMMARY 02

「忖度なき提言」が生んだ学童ホテル

転機1

高校生CFOの提言

ホロニックには、20歳以下の学生を役員会に迎え、率直な提言をしてもらう「CFO(Chief Future Officer)」制度がある。3期目に選ばれた高校生が突きつけたのは「子供の体験格差」という社会課題だった。

転機2

「学童ではない」と言われて生まれた名前

火曜定休のホテルの空間と時間を無償開放するアイデアを行政に相談したところ、「月〜金預からないなら学童ではない」と指摘された。「じゃあ学童ホテルです」——長田氏はそう答えた。

SUMMARY 03

"俺のホテル"と呼ぶ子供たち

開始から3ヶ月、現場からは想定を超えた変化が報告されている。

  • 学校の給食も家のご飯も食べない子が、家族食堂では完食する
  • 人前で自分を表現できなかった身体障害の子が、体験プログラムに積極参加するようになった
  • ある男児は誕生日の外食先に「俺のホテル」を希望した

親からは「週1回、メニューを考えなくていい、片付けなくていい」という声が相次ぐ。運営を担う社員も副業扱いで参加し、新卒採用にもプラスに働き始めているという。

SUMMARY 04

資金循環の設計——「未来税」と伊藤忠のケース

利用者からは一切お金を取らないと決めた上で、運営費は「未来税」(宿泊者売上の一部)と企業協賛でまかなう。

  • 伊藤忠商事のマンション開発案件では、モデルルーム見学に絡めた子供向け体験プログラムを提供——平日開催・親子同伴の募集は5分で満席、営業側にとっても質の高い見込み客接点になった
  • 年間維持費500万円は、まず自社が全額負担する前提でスタート——「腹を決めればできる規模」から始め、賛同者を後から募る設計
  • 同業のレストラン経営者(ルクロ・ド・マリアージュ)も、障害のあるスタッフの育成と接客サービスを組み合わせる「ユニバーサルレストラン」を10年運営——福祉と本業を横付けする発想は業種を超えて共鳴していた
QUESTION AND ANSWER

質疑応答

名星学園の校長先生(神戸市北区の悪い中学から「鬼」と恐れられた吉川校長)が、教育行政の現場で直面する問題と格差是正の取り組みについて講演。

Q教育行政の現場で直面する補助金の問題は?

A教育行政側には「これとこれとこれをしないとダメ」というルールが決まっており、学童に関しては補助金を出している。これらは全て税金で、行政側はうまくクリアしているが、名星学園の才能ある生徒たちが「頭偉い」と評価されたのは驚きだった。

Q大阪市が1万円の勉強塾を出しているが、申し込みはどうなっているか?

A申し込みが殺到している状態。しかし、プラスアルファを出せる子ははっきり言って違う。親が「自分のことが1番で子供は2番目、3番目」と考えている現実があり、格差は広がっている。この格差を縮めるためにも、取り組みを続けていく必要がある。

Q「社会を変える取り組み」はどのように始まるべきか?

A遠くの理想からではなく、目の前の違和感から始まる。田さんのように、目の前の違和感や「もったいないな」というところからスタートする。社会を変えるのは、そうした身近な違和感を解消していくことから。

Q「まだ生かしきれていない」可能性とは?

A私たち1人1人が仕事や日常で「まだ生かしきれていない」と感じていることがある。そういうところに可能性がたくさんある。「本当に巻き込まれる」という視点で、自分の仕事や日常を見直し、ワクワクするような取り組みにつながっていくんではないか。

MONTHLY FORUM

第145回 レオ財団 月例会

2026年01月

開催概要

開催 一般財団法人レオ財団 第145回月例会
(2026年1月)

会場 ル・クロ・ド・マリアージュ
レストラン&ウェディング

司会 西村 実花
(一般社団法人「こどものみかた」代表)

講師 長田 一郎 氏
(株式会社ホロニック 代表取締役社長)

VOICES FROM THE FORUM

参加者たちの言葉、それぞれの気づき。

毎回60名を超える経営者・社会人が集まる月例会。登壇者の言葉は、それぞれの現場に持ち帰られ、静かに、しかし確実に何かを変えていく。

高校生の一言から発想が広がり学童の活動されていることに私も年代問わず声を聞くことが大事だなと学ばさせてもらいました。また、最近の子は確かに何をしたいとかを持ってる子が少ないのは小さい時にどれだけ経験をしたかなんだと気づきがありました。

N.M.

心に残ったのは、地域に根づく事業展開をするために若い方々の意見を聴いて、それらを出来る方向で受け入れることとその実践力。新しく氣づいたことは、柔軟な考えと在り方で、業態を変化させることで、不可能を可能にする道を実践されている様子にハッとしました。

F.A.

自分の今あるものや、環境を工夫して空いている場所、空いている時間、少しの余裕を生かして、何か社会のために役に立つことができると言うことを学ばせていただきました。早速実行に移して、子供たちのためにミュージカルの体験プログラムを作らせていただきたいと思いました。

K.K.

私も会社を経営しておりますが、最近やっとパーパスの言語化に手を付けたばかりです。今日のご講演の中で、自身の解決したい社会課題が先か、当社の経営資産から解決しうる課題を考えていくのか、思い巡らせておりました。

N.H.

「体験格差」という言葉が、非常に心に刺さりました。
私自身、子ども4人を育てる共働きの6人家庭ですが、8歳の末っ子が「海を見たことがない」と話したとき、忙しさを理由に、情操を育む体験を十分に与えられてこなかったことに、あらためて驚かされました。

長田社長の取り組みは本当に素晴らしく、深く感銘を受けると同時に、ホテルの立地や地域性を考えると、「自分の住んでいる地域には、こうしたサービスは存在しないのではないか」という、体験の地域格差を痛感しました。

ぜひ長田社長には、この取り組みに全国のホテル・旅館が賛同し、共鳴し、同じ志をもって広がっていくよう、活動をさらに展開していただきたいと強く願っています。

I.T.